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ペッグ(Peg)


【一言でいうと】

ペッグとは、「通貨の価値を別の資産に固定すること」です。
たとえるなら、というかテントを地面に固定するペグと同じ意味合いで使われています。


【基礎解説】

仮想通貨の世界では、価格の変動が激しいことが大きな特徴です。
その一方で、「安定した価値を保ちたい」「決済に使いたい」といったニーズも多くあります。

このようなニーズに応えるために使われるのが「ペッグ(Peg)」という仕組みです。
「ペッグする」とは、ある通貨の価値を
他の通貨や資産に連動(固定)させることを意味します。

たとえば、1USDT(テザー)は常に1ドルとほぼ同じ価値を保つよう設計されています。
この「1USDT=1ドル」という固定の関係が「ドルペッグ」と呼ばれる状態です。

仮想通貨の世界では、ペッグは主に「ステーブルコイン(Stablecoin)」の安定性を支える基本構造として使われます。
ペッグを行うことで、仮想通貨の価格が常に一定の範囲に保たれ、取引や送金、資産保全などがしやすくなるのです。

実生活の例で言えば、

といったものに近く、**「常に一定の交換比率を維持する約束」**と考えると理解しやすいでしょう。


【重要性とメリット/デメリット】

▽メリット

  1. 価格の安定性
     ペッグにより、仮想通貨の価格が特定の資産と連動するため、急激な値動きを避けられます。
     特にドルペッグは、世界共通の基準通貨である米ドルに価値を合わせるため、国際的な取引に向いています。
  2. 利用者の安心感
     「1コイン=1ドル」のように分かりやすい価値基準があるため、初心者や企業でも導入しやすい。
  3. 経済活動の効率化
     DeFi(分散型金融)やNFT取引などで、価格変動に悩まず安定した価値の取引が可能になります。

▽デメリット・リスク

  1. 完全な固定ではない
     市場の混乱時や発行元の信頼が揺らいだ際には、**「ペッグが外れる(デペッグ)」**ことがあります。
     たとえば、2022年にアルゴリズム型ステーブルコイン「UST(TerraUSD)」がドルペッグを失い、価値が暴落しました。
  2. 裏付け資産の信頼性問題
     法定通貨にペッグされたコインでは、発行体が本当に同額の資産を保有しているかが問題になります。
     過去には、準備金の開示不足から市場に不信感が生じた例も。
  3. 政策・規制リスク
     政府がペッグ制の仮想通貨を「金融システムへの干渉」として規制する可能性もあります。

ペッグは安定の象徴である一方、「維持する力(信頼)」が途切れると崩壊する、繊細な仕組みでもあります。


【実例・比較】

▽代表的なペッグの例

名称ペッグ対象種類備考
USDT(Tether)米ドル法定通貨ペッグ最も普及。取引所で広く利用。
DAI(MakerDAO)米ドル(間接)仮想通貨ペッグETHなどを担保に自動調整。
WBTC(Wrapped Bitcoin)ビットコイン仮想通貨ペッグイーサリアム上でBTCの価値を再現。
PAXG(Pax Gold)金(ゴールド)コモディティペッグ実物資産に連動するタイプ。

ペッグは「何に連動させるか」で種類が分かれます。
特にドルペッグ型は「安定通貨」として、DeFiや取引所の基軸通貨として広く利用されています。


▽ペッグと類似概念の違い

概念内容ペッグとの違い
フロート制市場の需給で自由に価格が変動ペッグは固定・フロートは変動
為替介入政府が通貨の価値を調整ペッグはあらかじめ固定を宣言
CBDC(中央銀行デジタル通貨)国が発行するデジタル通貨ペッグのような連動ではなく、発行体が国家

つまり、ペッグは「安定を約束する仕組み」であり、変動する市場とは対照的な発想です。


【技術的背景(上級者向け)】

ペッグを実現するには、**価格を監視・調整する仕組み(オラクル・担保・バーン/ミント)**が必要です。
ここでは、代表的な3つのモデルを見てみましょう。


▽① 法定通貨担保型ペッグ(USDCなど)

[ユーザー] ⇄ [発行企業] ⇄ [銀行口座]
   |   ①ドルを預ける
   |   ②同額のトークンを発行
   |   ③トークンを返却 → ドルを払い戻し

1USDC ≒ 1USDを維持するため、発行量と預金残高が常に一致するよう監査が行われます。
信頼性は高いものの、中央集権的で透明性の確保が課題。


▽② 仮想通貨担保型ペッグ(DAIなど)

ユーザーはETHなどの仮想通貨を担保に預けて、DAIを発行します。

担保価値 × 担保率 ≥ 発行されたDAIの総価値

担保が一定値を下回ると、自動清算が行われ、DAIの価格が1ドル前後に保たれます。
ブロックチェーン上のスマートコントラクトがペッグを自動維持するのが特徴です。


▽③ アルゴリズム型ペッグ(USTなど)

USTでは、LUNAトークンとのバランスで価格を調整していました。

このように、供給量を変えて価格を均衡させるのがアルゴリズム型の特徴。
ただし、暴落時には制御不能となり、デペッグ(崩壊)に至るリスクもあります。


【まとめ】

ペッグとは、通貨の価値を他の資産に「固定」する仕組み。
仮想通貨の安定性を支える重要な技術ですが、信頼や運営体制が崩れると維持できません。
「安定」を生む仕組みは、同時に「信頼」で支えられている点を理解しておきましょう。

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