【一言でいうと】
トランザクションとは、「ブロックチェーン上で行われる取引や送金の1件分の記録」のことです。
たとえるなら、銀行の通帳に「〇月〇日、Aさんへ1万円送金」と書かれる1行の記録のようなものです。
この1行が、ブロックチェーンの世界では「トランザクション」と呼ばれます。
【基礎解説】
トランザクション(Transaction)とは、ブロックチェーン上で行われる価値や情報のやり取り(取引)を記録する単位です。
最も身近な例は、仮想通貨の送金。
たとえば、あなたが友人にビットコインを1BTC送ると、その送金データが「1件のトランザクション」として記録されます。
このトランザクションには、主に以下のような情報が含まれています。
- 送信元アドレス(誰が送ったか)
- 送信先アドレス(誰が受け取ったか)
- 送金額
- 手数料(トランザクションフィー)
- 署名情報(本人確認のための暗号)
これらの情報が1つのデータとしてまとめられ、ネットワーク上のノード(参加者)によって検証されます。
正しいと確認されると、そのトランザクションはブロックにまとめられ、最終的にブロックチェーンへ書き込まれます。
つまり、トランザクションはブロックチェーンの「細胞」のようなもので、
それらが集まって「ブロック(ひとまとまりの記録)」を構成しているのです。
実生活にたとえるなら、
「レジでの1回の会計」や「銀行での1回の送金手続き」が、まさにトランザクションに相当します。
【重要性とメリット/デメリット】
▽メリット(利点)
- 取引の透明性と信頼性
すべてのトランザクションはブロックチェーン上に公開され、
誰でも内容を確認できます(ただし匿名性は保持されます)。
これにより、不正取引の隠蔽が難しくなります。 - 改ざん耐性
トランザクションは暗号化されており、
一度ブロックに追加されると変更がほぼ不可能です。
中央管理者がいなくても、取引履歴が正確に保たれます。 - 自動化との相性の良さ
スマートコントラクトと連動することで、
条件が満たされたときに自動的にトランザクションが実行される仕組みを作れます。
▽デメリット(リスク)
- 処理速度の制限
ブロックチェーンの設計上、1秒間に処理できるトランザクション数(TPS)が限られています。
利用者が増えると送金の遅延や手数料の上昇が起こることがあります。 - 手数料の変動
混雑時にはトランザクション手数料(ガス代)が高騰するため、
少額送金が割に合わなくなるケースもあります。 - 取り消しができない
ブロックチェーン上のトランザクションは確定すると元に戻せません。
誤送金や詐欺被害の場合も、銀行のような返金手続きは基本的にできません。
これらの特徴を理解したうえで、ブロックチェーンの強み(信頼性)と弱み(即時性の制限)をバランスよく活用することが大切です。
【実例・比較】
▽代表的なブロックチェーンにおけるトランザクション
| ネットワーク | 処理速度(TPS) | 特徴 |
|---|---|---|
| Bitcoin(BTC) | 約7件/秒 | 高い安全性だが処理速度は遅い |
| Ethereum(ETH) | 約15〜30件/秒 | スマートコントラクト対応 |
| Solana(SOL) | 約3,000件/秒以上 | 高速・低コストで大量処理に強い |
| Polygon(MATIC) | 約65件/秒 | Ethereumの拡張的レイヤー2 |
これらの違いは、トランザクションの設計と検証方法にあります。
たとえば、ビットコインはPoW(Proof of Work)による厳格な検証を行うため遅いですが、
Solanaは並列処理技術(Proof of History)を採用し、桁違いの速度を実現しています。
▽類似概念との違い
| 用語 | 内容 | トランザクションとの違い |
|---|---|---|
| ブロック | トランザクションをまとめた1単位 | トランザクションが複数入っている箱 |
| ガス代 | トランザクションを処理するための手数料 | トランザクションを動かす燃料 |
| アカウント | 取引の発信元または受取先 | トランザクションの“住所”のようなもの |
| ノード | 取引を検証・承認するコンピュータ | トランザクションを監視する審査員 |
トランザクションは「ブロックチェーン活動の最小単位」であり、
他の概念(ブロック・ノード・ガス代)と連携して機能しています。
【技術的背景(上級者向け)】
トランザクションの技術的な仕組みを、ビットコインを例に見てみましょう。
ビットコインのトランザクションはUTXO(Unspent Transaction Output)モデルを採用しています。
これは、「使われていない出力(残高)」を次のトランザクションの入力として使う仕組みです。
▽簡易ブロック構造(テキスト図)
トランザクションA:
入力:前回の出力Tx0(1BTC)
出力:受取人Xに0.8BTC、送り主Yに0.2BTC(おつり)
数式的に表すと:
Input = Output1 + Output2 + Fee
たとえば、あなたが1BTCを持っていて、
友人に0.8BTC送る場合、残りの0.2BTCは「おつり」としてあなたの新しいアドレスに戻ります。
このように、ブロックチェーンは常に「入力=出力+手数料」で整合性を保つよう設計されています。
一方、Ethereumなどのスマートコントラクト型チェーンでは、
「アカウントベースモデル」が採用されています。
これは銀行口座に近く、アカウントごとに残高を更新していく形式です。
▽モデル比較
| モデル | 採用チェーン | 特徴 |
|---|---|---|
| UTXOモデル | Bitcoin, Cardano | 高いセキュリティと追跡性 |
| アカウントモデル | Ethereum, BSC | 柔軟でスマートコントラクトと相性が良い |
それぞれ一長一短ですが、どちらもトランザクションの真正性と整合性を保証するための設計思想に基づいています。
【まとめ】
トランザクションとは、ブロックチェーン上での1回の取引記録。
改ざんできず、誰でも確認できる信頼性の高い仕組みです。
技術的にはシンプルながら、ブロックチェーンのすべてを支える基礎です。
【関連用語(内部リンク用)】
- ブロック
- ガス代
- ノード
- スマートコントラクト
- コンセンサスアルゴリズム

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